「わっ! わっ、烏(からす)ちゃん久しぶり、肩まで髪伸ばしたんだ」

雀(すずめ)が鳥のように両手をパタパタを振りながら言った。

「ちょ、ちょっと伸びたかな? 同じクラスの子にはあまり言われないけど……」

烏は照れるように言いながら肩まで伸びた黒髪を指でといだ。

「毎日見てるからだろうね。私は久しぶりだから伸びたのがよくわかるよ、カワイイよー」

「あ、ありがと……。 でも雀ちゃんのショートボブも可愛いと思うよ」

「へへっ、照れるなぁ」

二人は小学五年生のクラスが違う幼馴染同士だ。今日は雀の家へ烏が泊まりに来ている。

食事を終えて外の家族が寝静まった頃、雀はレンタルDVDを手にとって見せた。

「じゃん!」

「おっ。いいとこどり?」

「うん、試合シーンだけ抜粋して借りてきた」

「これって男の人が熱血しながら観るアニメだから借りるのちょっと恥ずかしいよね、雀ちゃん頑張ったね!」

「うん、でも、むかーしのアニメだからレトロマニアっていうの? なんか店の人に通だねーって言われたよ」

「雀ちゃんって通なんだ、おっかし」

ケラケラと烏は笑った。

「で、これはどうかなって色々勧められちゃって、今度借りますって言っておいたけどお小遣いもう無いよ」

「うん、レンタル代はワリカンだからちゃんとお金渡すよ。後で渡すから観よ?」

「うん、観よ観よっ!」

雀はDVDドライブへディスクをセットすろとテレビをつけ、音量を出来るだけ小さくした。

「こ、今回もいいシーンあるかな」

「あ、あるかな、あると……いいね」

二人は少し緊張したおもむきで言う。

しばらく見ているとボクシングの試合シーンはすぐに始まった。

テレビの向こうで殴り合っている様子を食い入るように見ている。

「痛くないのかな」

「どうなんだろう。でっ、でもこの位じゃないと……ねぇ」

「そ、そうだよね。前回借りたのも激しかったしね」

「うん、凄かったよね、あのシーンも凄かったし」

「やっぱり、あのシーンだよね……」

「なっ、なんか恥ずかしいごめん」

「私もだよっ、恥ずかしい……」

 

『あのシーン』はわりと早く訪れた。

アニメの主人公は対戦相手にボディを食らってマウスピースをゲボッと吐き出した。

そしてすぐ唾液まみれになってベチャッと跳ねるマウスピースがアップで映し出された。

そのベチャッという音に二人の体はビクッと反応した。

 

「は、吐いたね」

最初に雀が口を開いて言った。

「うん、吐いた」

「わざわざアップで、つばだらけのを見せるってなんでだろうね」

「わかんない、でも凄かった」

「もう一回見る?」

「み、見ようか」

雀がリモコンで少し巻き戻すと同じシーンをもう一度再生した。

さきほどと同じように唾液まみれのマウスピースが跳ねるシーン。

「く、臭いのかな?」

「えっ? 雀ちゃん嗅ぎたいの?」

「いっいやそこまで言ってないけど……つばって臭いかなと単純に」

「そっ、そうだよね。臭いよねきっと。だってこんなにツバだらけだもん」

「はは、ははは」

「はははっ」

二人はぎこちなく笑った。

 

「……ぬるぬる出た?」

雀がモジモジしながらふと呟いた。

「えっ、うーん、雀ちゃんは?」

「ぬるぬる……多分出てる」

「私も出てる」

「このぬるぬる、何なのかな?」

雀は自分のパンツのクロッチを指でなぞり、粘性の液体をすくった。

「おしっこじゃないんだよね、どきどきしたら出てくるけど何だろねこれ……」

「何だろね、私もコーフンしたら出てくる。っていうか今出てるんだけど……」

烏も自分のパンツに指を入れて指に付着させた。

「昨日もね、パンツにいっぱい出たからクンクンしたら、おしっこの匂いじゃなかった」

「えっ? 雀。クンクンしたの?」

「した……」

「……」

「……」

 

沈黙が続いた。

二人は色々な意味でドキドキしながらテレビを見ている。

アニメの中で試合が進む中、主人公がアッパーを食らってマウスピースを吐き出した。

宙を舞うマウスピースがまたしてもアップで映し出される。

 

「な、何でこんなにアップにして見せるのかな」

雀がモジモジする動作を激しくしながら呟くが、烏は無言でテレビを食い入るように見ていた。

「か、烏ちゃん?」

雀はもう一度声をかけたが、烏は無言だ。そんな時間がしばらく過ぎ

 

「す、雀ちゃん!」

急に烏は口を開いた。

 

「なっ、何?」

「あっ、あのね……。雀ちゃんのぬるぬるしたパンツを……クンクンしたいなって、その、思って、あの」

「えっ?」

「いやだから……。もいっかい言わないとダメ?」

「あ、いやいいんだけど……。いいんだけど臭いのが恥ずかしいかな」

そう言いながら雀はスカートの中に両手を入れてゆっくりとパンツをおろした。

「はい烏ちゃん」

「あ、ありが……と」

パンツを受け取る烏の手は震えていた。そしてそっとそれを丸めると鼻をうずめた。

 

 

「これが雀ちゃんの匂いなんだ……」

「くっ、臭いでしょ?」

「すごくおしっこの匂いがするけど、なんか魚みたいな匂いもするよ」

「かっ、烏ちゃんのは?」

「えっ?」

「烏ちゃんのも頂戴」

「わ、私も?」

「うん、だって私だけって不公平だよ……」

それを聞いて烏もパンツを脱いで雀に渡した。

「わっ、烏ちゃんのパンツだ。どうしよ」

「どうしよって……」

「何となく流れでもらっちゃった。パンツ交換会だね」

そう言って、へへっと笑うと雀は烏のパンツのクロッチへ鼻を突っ込んだ。

「わっ、烏ちゃんのパンツっておしっこより、ぬるぬるの匂いのほうが凄い」

「そうなんだ?」

「うん、私っておしっこ漏れやすいのかな、なんかコドモっぽくて恥ずかしいな」

 

 

しばらくすると二人はお互いのパンツを嗅ぎながらボクシングアニメの試合を見ていた。

「私達ってヘンタイって言うのかな」

「ヘンタイだと思う……」

 

試合は後半に入ったのか、主人公はボロボロだ。

ボディを食らうと血みどろのマウスピースを吐き出した。

それはアップにはならず、ボトンボトンと跳ねる様子が見て取れた。

 

「烏ちゃん、なんかさ……、ぬるぬるがいっぱい出そう、おしっこみたいに出そう」

「えっ? おしっこ?」

「だからさ……あの、見られたくないからぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

ぐじゅっ!と音がして体育座りしたままの状態で雀の股間から粘液が放出された。

「ぐっっっ!」

びくびくびくっと雀は体を痙攣させながら、それから数回ほど放出を繰り返した。

 

烏は呆然とその様子を見ていた。どうして良いのか解らない。

熱にうなされるような顔をして雀はあおむけに倒れた。

「すごい、なんか最近こうなるんだ。頭が真っ白になってビチャッってぬるぬるが飛び出してさ……頭の

もやもやがスッキリするんだ」

「スッキリするんだ……」

「うん、おまたを触ったりしてもなる。烏ちゃんもやってみたら?」

「触っただけでそうなるの?」

「興奮しながらいじるともっといいから、あの……」

「ん、ん?」

「ほら、私達っておかしいから、マウスピースの場面を見ながらすると、もっといいんだ」

そう言いながら雀は立ち上げているパソコンをいじり出した。

「あのね烏ちゃん。マウスピースがべちゃっってなるシーンを編集してダイジェスト作ったんだ」

「えっ」

「変態だよね。それを見ながらおまたを触ってた」

「……」

「見る?」

「見ていいの?」

「あ、見たいんだ」

「う、うん」

雀がカチカチッとマウスをクリックすると動画が開いた。

動画が始まり、それはループして延々とアニメのキャラがマウスピースを吐き出してそれが跳ねる様を繰り返した。

それを見ながら烏は思わず性器を弄った。

揉みほぐすようにするとグチュグチュ音がした。

「ぐっ!」

烏は体をびくびくびくっと痙攣させた。

「凄いっっっっ!」

烏はそう言うと雀の時のようにあおむけに倒れた。

「はぁ、はぁ。はぁ、はぁ。本当だ。あたまがまっしろになってすごくきもちがよくてスッキリする」

「で、でしょ? なんか恥ずかしくてヘンだけど気持ちいいんだよね」

「うん、でも私、雀ちゃんみたいに飛び散らなかったな」

「人によって違うのかな……」

 

 

部屋には生臭い匂いが漂い、長い沈黙が続いた。

 

 

雀は呟いた。

「烏ちゃんがボクシングして、マウスピース吐き出したらそれをクンクンしたい」

「えっ?」

「ごめん、私おかしいかな」

「いや……あのね、あのね?」

「う、うん」

「私も同じこと考えてた。雀ちゃんがボクシングをしててさ、マウスピースを吐いたりしたらそれをクンクン……」

「か、烏ちゃんもか。り、両思いなんだ、よね?」

「そ、そうだね」

 

そして

「あの、マウスピースさ」

二人の声がシンクロした。

「え、烏ちゃんどうぞ」

「い、いや、雀ちゃんどうぞ」

「えーと、じ、じゃあね」

「うん」

「じゃあ言うけどね、あの、その、あの」

「う、うん」

雀はおもむろに机の引き出しをあけて何かを取り出した。

「これ、マウスピース作っちゃった。ずっとくわえてたりしてさ、洗ってないヤツ」

「雀ちゃん、実は私も……」

バッグからビニール袋に包まれたマウスピースを烏は取り出した。

「同じこと考えてたみたい。ひょっとして自分の唾まみれのマウスピースを嗅いで興奮する……の?」

その雀の問いに烏は頷いた。

 

「ちょっと苦しいかもしれないけど、お互いに一発ずつパンチを入れてマウスピースを吐き出してさ」

「うん、それでお互いにクンクンする?」

「うん、もうしちゃおう?」

「しようか」

 

もう流るるままに話はトントンと進んだ。

 

 

 

準備は終わった。雀は二人分のボクシンググローブを雑貨屋で買っていた、本格的なモノでは無いが雰囲気を出すには

十分だった。それを付けて裸で同時にボディを打つようになった。

 

「い、いいかな、さん、にー、いち、でいくよ?」

「うん、じゃあ雀ちゃんがカウントして」

「わかった。さん、にー、いち」

 

 

ゼロ

 

ずむっ!

 

お互い容赦はしなかった。

「ごぽっ」

「ぐぽっ」

二人は奇妙な声をあげてフローリングの床へベチャッとマウスピースを吐き出した。

最初はボディの打撃への苦しみのせいで腹部を抑えていた二人だったが、ほぼ同時に

唾液を吐き出した。

 

ビチャビチャ

 

 

そしてマウスピースを交換して匂いを嗅ぐ。

「烏ちゃんのってやっぱり想像通りに唾臭い。これが烏ちゃんの吐き出したマウスピースなんだ! おなかを

殴られてボクシングの試合みたいに殴られて烏ちゃんの吐いたマウスピース、唾だ、唾だよぉぉぉ」

「雀ちゃんのも唾臭い、すっごく臭くてコーフンするよぉ、びっちょびちょの雀ちゃんのマウスピース。つーんって臭い

マウスピース、もうどうしていいかわかんないよぉ!」

 

二人は同時に意識を白くした。

性器をいじらずとも、そこからはゴポッとした白濁液を吹き出してその場に倒れ、激しく痙攣を繰り返した。

快楽の波が何度も何度も繰り返し来て、その後の記憶は無い。

 

 

二人の意識は朝に戻った。

 

「はなみずでるよぉ」

「さむいよぉ」

 

風邪をひいていた。

 

                           END