イトコとアリジゴク

 

東京も寒いな。珍しくちょっと前に雪が積もったし。

 

「朝倉」姉ェは東京に出張があったらしく、今日、俺が住んでいる下宿へ寄るらしい。俺の実家で聞いたらしく

朝倉姉ェ自身からメールが来ていた。いきなりで焦った。今日はバイトが無いのでまあ良いのだが……。

 

小さい頃は田舎に暮らしていて、近所であった年上の朝倉姉ェといっしょに神社で遊んでいた。

小学6年で3つ下の俺は朝倉さんのシャンプーの匂いにクラクラしていたが。一つ今思えるのは

朝倉姉ェは同棲の友達とはしゃいで遊んだり恋いをする時期だったはずだ。

きっと俺と同じように友達がいなかったんだろう、そしてそんな者同士がたまたま近くにいたので

会っていた。ただそれだけだと思う。

 

「これ、アリジゴク」

俺がアリジゴクの巣に枝を向けて自慢をする。

「へー、ジゴクって名前の付く無視っておるんじゃねぇ」

朝倉姉ェは目をまるくして少し驚いた。

 

俺は勿論トーク力なんて無かった。朝倉姉ェは俺を軽くあしらって

しょうがないから遊んでくれていたのかもしれないが、それよりいつも

隠すようにしているが、たまに見える手の引っかき傷が痛々しかった。

親からの暴力も有ったと後から聞いたし、いじめのようなものだったのかもしれないが

今となってはわからない。

ただ、何とはなく二人で歩いたり他愛もない話をしていたが

朝倉姉ェは、しばしば遠くをぼーっと見ていて俺の話を本当に聞いているのかは

怪しかった。

 

俺はそんな中少しでも興味を引けた、アリジゴクについて色々調べた。

詳しい内容はもう忘れたが、生物学的な内容よりも「アリジゴクの在り方」に

朝倉姉ェは興味を惹かれたようだった。

 

そして、ある日呟いた朝倉姉ェのこの言葉を俺は忘れない。

いつも遊んでいた朝倉さんが引っ越す前の日

「ウチ、アリジゴクになっちゃろうと思っちょるんよ」

そう言いながら巣の砂をサラサラ触りながら、どこか諦めを感じさせる、いつものをしていた。

「そうなん?」

俺には深く意味を汲み取れなかったのだが、心の隅にほんのりと恐怖がぽこんと沸いた。

「朝倉姉ェ、アリジゴクになるんか?」

「そう、ウチはなるんよ」

「俺も朝倉姉ェの巣に入れられるんか?」

そう言うと朝倉はフッと笑みを浮かべた。

「ケンジは素直な子じゃけ、巣にはひっかけんよ」

そう言って俺の頭は撫でられた。

去っていってからしばらくたって、朝倉の家庭では両親の浮気で家庭崩壊に

なっていたと大きくなってから聞いた。それがらみで暴力も受けていたんだろう。

 

しかし俺はそんな回想に想いをはせる時間はそんなに無い。もうすぐ朝倉姉ェが来る。

美人になっているだろうなぁと、たまにちょっとした興奮をしながら汚い部屋を片付ける。

最終的に、よくわからんものはまとめて押入れにぶち込もうという事になり

山のようにあったゴミは全て押入れへ押し込んだ。

後は匂いだ。女友達にもらっていたお香に火を付けて部屋へ匂いを充満させる。

どこぞの海外の貴族は体臭がキついんでお香も濃いヤツをたいてたんだっけ。

 

まあ一段落ついた。テレビをつけると熱いコーヒーを入れてまったりと飲む。

朝倉姉ェは当時、肩まで髪を伸ばしていた。

今まで馬鹿のように部屋の中を掃除掃除とかけまわっていて乱暴に思い出を思い出していたが

こう落ち着き目を閉じるとあの遊んでいた神社の裏の土の匂いが漂ってくるようだ。

 

 

夏、俺に向かい合ってアリジゴクを見ている俺は目線を上げる。

俺より背の高い朝倉姉ェに紅い太陽の遮光が当たり、朝倉姉ェの顔が真っ赤に染まる。

しっとりと濡れた目がそれを反射してウルウルと揺れていた。

それを見て、ああ帰らなきゃいけない時間なのだなと思う反面、この遮光の影響で

朝倉姉ェの心情が何となく浮き彫りになっているような気がして俺は顔をじっと見続けていた。

その様子はこう、何となく悲しかった。同じようなひとりぼっちな存在。そんな中でも俺と朝倉姉ェの

存在は遠く離れたものなんだなと納得していた。

 

 

それから何をしていたかは覚えていない。ただ緊張して、あれでもないこれでもないと部屋をウロウロしていたり

畳の上で横になって「寝てたよー」って演技しようかなと考えたり、多分そのような事ばかりしていたのだと思う。

 

部屋のチャイムが鳴り、俺は「遂にこの時が来たか」と思いながら「はーい」と声を出す。

「来たよー」

想像していたより明るい声がした。俺は緊張しながら震える手にガッと力を入れて、全ての動きがナチュラルに見えるように

努力しながら鍵をあけてドアノブを開いた。

「あぁー、ケンジかいね」

「あ、ああ。朝倉姉ェ、久しぶり」

俺は緊張でガチガチの体でそう返答した。

 

果たして朝倉姉ェは美人になっていた。そして明るい笑顔。髪型はあの頃と同じ、肩まで伸びた髪の毛、色は真っ黒だ。

とにかく社会人になって人との付き合いも増えたのか、あの閉鎖的な雰囲気が全然しない。

明るい社会人は俺にとって眩しかった。バイト暮らしの大学生にここまでキラキラしたオーラは出せない。

 

「安っぽいけどまあコーヒーでも」

「ありがと」

コーヒーの飲み方一つとっても大人になったんだなぁ。

そっと口にコーヒーを持っていく上品な姿が見える。俺の部屋には似つかわしくない人だ。

 

「……朝倉姉ェは社会人になってから、ホントに美人でいいカンジになったのぅ」

「そりゃあウチだって大人になれば代わるっちゃ、背も伸びるしセクシーにもなるもんよ?」

朝倉姉ェはそう言ってフフフッと笑った。

だがそしてすぐに

「あの時のままじゃ、いけんかったしね」

そう言って、僅かにあの頃の目をした。影のあるような、何かを諦めてしまったような目。

だがそれはすぐに戻る。

 

「おっぱいも大きくなったんじゃけど、触る?」

Eカップほどある胸を俺に強調するように向け、突き出す。

「……」

「ケンジ、真っ赤になっちょる。こんなベタな冗談も通用せんのかね」

再度、朝倉姉ェは笑った。

「これが大人が子供をからかうっちゅう奴か……それにしても、お互いに方言が抜けんのぉ」

「そうじゃねえ、こだわっちょるわけでも無いんじゃけど、今の職場ではプラスになるけぇ」

「プラス? そういう仕事もあるんか」

一気に朝倉姉ェの顔が曇った。仕事の話は聞いてはいけなかったのかもしれない」

「そういえば―――」

とっさに話を変えようとした時

「あ」

と朝倉姉ェが驚いた顔をして俺の部屋の窓を指さした。

 

しまった。

 

まず俺は女子ボクシングが大好物だって事だ。

そしてもう一つ。DVDで使用された使用済みコスチューム一式を

専門のショップで買い込んでいた事。

そしてそれらを脳内で普通に服を下げていると勘違いして片付け忘れていた事。

俺はどうしようと頭が真っ白になった。

 

「あ、ああ、これ俺が着るんじゃない! 見たことないじゃろうけどこれってあるスポーツのコスチュームで……」

「あ、ああ。まあ知っちょるけえ、ええけど」

「え?」

「女子ボクシングじゃろ? 知っちょる。ただ身内にこういうフェチがおるとは思わんかった……」

そう言われながら、朝倉姉ェの顔を俺は見れなかった。きっと軽蔑されているだろう。

こういう趣味もあると知っている朝倉姉ェも凄いが、やはり一番すごいのはそのフェチを持っている本人だろう。

 

そこから会話がしばらく止まった。

 

「ケンジ、ウチさ……今晩仕事がある」

「ああ……帰るんか?」

もう帰るつもりだな、そうだろうな、そう思って返答したが

「夜までここにおって、仕事は直に行くわ」

「そ、そうか」

「軽蔑してすぐに帰られると思ったん?」

「いや、それは、それはの」

「男じゃけ、色々あるんじゃろ」

朝倉姉ェはクスクスと笑った。

良かった。軽蔑までは行かなかったのか。しかし夜までいてここから仕事場まで直に行く?

「朝倉姉ェ、じゃったら何の仕事をするんか教えてもらってもええじゃろうか?」

「うーん、サプライズ。で、ケンジにも仕事を手伝ってもらおうと思うんじゃけど」

「え?」

「何というか、まあ色々とケンジとは腐れ縁なんよ」

首を傾げる俺に、朝倉姉ェは仕事について、何も教えてくれなかった。

「いい意味のシークレットだから」

朝倉姉ェは人差し指を口の前に持ってきて息だけで「シーッ」と言った。

 

ひょっとして風俗嬢で一番に俺を客として迎え入れてくれるとか。

そんな馬鹿なことはないな。

己の馬鹿さ加減にうんざりしていると聞かれた。

「彼女は?」

「おらん……」

「おらんのかぁ、面白く無いなぁ」

「面白くなくて悪かったの! 俺は生まれて一度もモテた事も無いけぇ!」

俺の軽く怒る姿を見てまた笑った。

今日ここに来て三回目、朝倉姉ェは笑う人間になったんだ。

ほんの少し昔の目を見てしまったが、明るい人生に向かっているに違いない。俺は少し安堵した。

「ケンジ、オバちゃんにモテるタイプじゃろ」

「うへっ?」

「じゃけぇさ、『オバチャンががもっと若かったらねぇ』って言われるタイプじゃろ」

違ってはいなかった。

「まあ熟し尽くした後の女性にはモテるかもしれんの」

「ケンジがかなり年のいった熟女マニアの道を行ったら幸福な人生になると思うよ?」

「ならん!」

必死に否定するが、想像して俺も笑ってしまった。

「そう言う朝倉姉ェは彼氏おるんか? 人を茶化す事言えるんかぁ?」

「ウチは作らん派じゃもん」

胸を張って言い返された。ほっとしたような気もした。

「大人になったら猥談よねー、そういえば」

「ん?」

「ケンジ、ウチに両親がおらんときに泊まりに来たよね、確か一回きり」

「うん、あったあった」

「あの時、夜中に洗濯機からウチのパンツ出して匂い嗅いどった」

「うっ、な、何で知っちょるん……」

「ずかずか出ていって注意も出来んじゃろ……ウチも困ったんじゃけ」

「いや、は、恥ずかしいな」

「どうじゃった?」

「な、何が!?」

「匂い。いい匂い? 臭い?」

「ど、どうじゃろ」

俺はクサいと言いたかった。あこがれの年上の女性の下着。その下着のクロッチが

汚れてクサかったのが逆に興奮してトイレを借りていそいそとソロ作業をしたのだ。

「ま、いっか。今夜があるし」

「え?」

「あ、いやいや、まあ今夜の仕事をお楽しみに」

 

そして軽く酒でもという事で、俺と朝倉姉ェは350mlのビールを一本ずつ飲んだ。

その最中、最近のお笑い芸人の話題で少し盛り上がった。

「少し、仕事まで寝ようか。夜中の2時から仕事じゃけ」

「え? そんなに遅い時間なの?」

「うん、じゃけ、ちょっと寝よ、ウチを襲うのはナシでね」

「襲わんよ……まあ2時までじゃったら軽く寝るか」

勢いで二人は寝ることにした。パンツ嗅ぎ事件をごまかしたかったので丁度良いと言えば

良かった。

「畳の上でええけぇ、掛け布団だけ有る?」

「うん、有る。今日はあまり冷えんらしいけぇ、軽くかぶって寝るか」

目ざまし時計をセットしてすぐに目を瞑った。

 

すぐに寝付いたのだろうか。

夢は見なかった。あの時と同じ二人で寝ているのだから昔の事を夢ででも見るのかと思ったが

深い眠りに入ってしまったらしい。

 

目ざまし時計は鳴らなかった。

もう事前に止められており、朝倉姉ェは家を出る準備を終えていた。

揺すられて俺は起きたらしい。

「さ、ケンジ。行こうや」

優しく朝倉姉ェは言った。

 

 

タクシーをしばらく走らせると人通りの全く無い路地に出ると、潰れたライブハウスの前で止まった。

「ここ、今日ほ仕事場所」

俺には全く覚えのない場所だったが何となく頭に浮かんだ事がある。

地下女子ボクシングというものは本当に有り、その一つが確かこういう場所に有ったハズだ。

「ここは地下女子ボクシングの会場、今日は私が選手として出て、ケンジが私のセコンドをするって事」

 

何が「って事」だよと思ったが、まさか朝倉姉ェが地下女子ボクシングの選手だったとは。

 

 

そこから何があったかほとんど覚えていない。もう頭がクラクラしてしまって。

色々と手続きはあったが俺は夢の中で起こっている物事のように準備をした。

正気に戻ったのは、「じゃあトップレスにパンツだから」

と、朝倉姉ェが控え室で上着とブラジャーと外した時だ。

夢にまで見た生の胸がぷるんと揺れる。

「この仕事には慣れてるけど、ケンジに見られるのはちょっと恥ずかしいね……Eカップ有る」

「そ、そんなにか」

俺は乳をガン見するとようやくそれだけ言えた。

このまま射精してしまいたかったが、ここで出してしまったらこれから先が。

いや、先にスッキリしておいて後からゆったり心に余裕を持って楽しむか。

それを考えているともう気がついたらリングの上だった。

青コーナー、椅子に座っている蒼いグローブに純白なパンツをはいた朝倉姉ェの横にいる。

相手はショートボブに茶髪、20歳位のかるいぽっちゃり系で赤いグローブに、潤發なパンツ。

そしてセコンドも女性。レフリーも女性なのでリング周りで男は俺だけだ。

俺の手には純白のマウスピースが握られている。ゴングが鳴ると俺はこれを朝倉姉ェの口に突っ込めばいい。

後は特等席のリングサイドで試合を見てセコンドの仕事をするだけで試合進行について口出しは全くしなくて

良いらしい。

リングの真上に四面の大きなディスプレイが備え付けられており、きっとリアルタイムでここぞという場面や場所を

映し出すんだろうなと思った。

リングの上はライトで少し熱く、朝倉姉ェのおっぱいがテラテラ汗で濡れている。

 

カーン

 

ゴングだ、俺の仕事は……とりあえずマウスピース。

朝倉姉ェの童顔な顔が俺を見つめている。そんな中、口元へマウスピースを持っていくとあーんと口をあけて

その口には少し大きい肉付きの良い白い物体をねじ込む。

グローブで口の中のそれの位置を微調整するとリングの中央へ出ていったので俺はサッとリングサイドに降りた。

そうして試合開始の打ち合い、どちらもダメージを受けず与えずな無難な打ち合いを見ながら俺は少し落ち着いた。

それにしても無様にエロくドロドロになって負ける朝倉姉ェが見たいのか、派手に勝利するエロくて汗を散らす方が

見たいのか複雑な気分だ。

だがもう少しするとこれは朝倉姉ェの負け試合だなと思った。テクニックは相手の方が遥かに上だ。

一度フックを食らうと、どんどん連続でフックを食らっている。

こっちに背中を向けながら殴られてどんどんこちらに迫ってくる。

 

グワシッ!

 

一発良いのを食らったらしく、朝倉姉ェがぐるりとこちらを向いてロープにすがった。

「ロープダウン!」

レフリーの声がして、見上げる俺の上でこちらにマウスピースを口からはみ出させている朝倉姉ェが俺と目を合わす。

マウスピースは確かに口より大きく、口から皮を剥いたゆでたまごをほおばっているかのように見え、隙間から唾液が

ダラダラーッと垂れている。俺が何気なく手を出すと朝倉姉ェの唾液は俺の手の平を生暖かくした。指の隙間から

その粘液は糸を引いて垂れていく。

ロープにすがったまま朝倉姉ェはマウスピースをグジュグジュッという音をたてて位置を調整すると

「マウスピースくわえてるとこんなに唾がいっぱい出るんだよ……知ってた?」

と言った。

すぐにロープダウンから立直して試合に戻っていって、俺の手にはヌルヌルした生暖かい唾液のみが残された。

すぐに女性が映像カメラを構えて「遅くなっちゃった」と小声を出して朝倉姉ェの残した唾液の溜まった場所を写している。

俺に「手も見せて下さいねー」と言ってきたので手をカメラに向けた。

カメラの女性はマイクを手に言った。

「はい、唾液がぶちまけられた現場です。朝倉選手は汚い事に、自分のセコンドの手の上にまで唾液を吐き出してしまっており

現在このように汚く濡らしてしまっております!」

垂れて行く唾液をしばらく映すとカメラの女性はどこかへ行った。

リングの上へ目をやると、朝倉姉ェは打たれっぱなしだった。

俺は、ああ。フェチの世界ってこんなに凄い世界なんだと思った。

ゴングが鳴り、青のコーナーポスト椅子を用意して待った。

フラフラと朝倉姉ェが歩いてきて椅子に据わった。

汗の匂いがむわっとする。大人の体臭というか、すえた匂いだ。

「ん」

マウスピースを手で取り出して洗ってくれと言わんばかりに、朝倉姉ェは口からマウスピースをにゅるんと剥き出す。

唾液でヌラヌラ濡れているそれを、俺は黙って取り出そうと口を持っていった。

口とマウスピースの隙間に親指と人差し指を左右に入れると、ゆっくり取る。

 

ヌチャッ

 

と小さな音をたててマウスピースが糸を弾きながら取り出される。

「はいちょっと見せて下さい」

俺の手の上にボデンとある唾液まみれのマウスピースをカメラを持った女性がマイク片手に映す。

ああこういう感じで進行されるのかと俺は納得してしまった。

「はい、豪腕チャンピオンのパンチを1R最初から受け続けたマウスピースはとりあえずこのような感じです、さすが

撃ちまくられただけあって唾液をたっぷりと吸っているようです、これからの形や匂い等の状態に注目です!」

 

とりあえず俺は出来る事をやろう。

「朝倉姉ェ、熱くないか?」

「……熱いかもしれん、ほらよくやってるでしょ? インターバルでトランクスをパタパタして風通しを良くするやつやってくれん?」

「うん、わかった」

とはいえパンツのほうがトランクスより面積が遥かに小さい。それをパタパタすると見えてはいけないものが見えてしまう。

が、やるしかないのだろう。

朝倉姉ェのパンツをパタパタとする。陰毛が丸見えだ。汗でふやけて近くに顔を寄せるときっとモワッとした熱気を感じる事だろう。

それよりパタパタと風を通すのは良いが出ていく風は俺の顔に当たる。

生臭く、魚のような匂いが俺の花を刺激する。正直クさい。生臭いだけなら我慢できるのだが。

マ○コの匂いを思い切り嗅ぐ形になっている。

朝倉姉ェはこんなマ○コの匂いをさせていたのかと思うと、股間が充血しそうだったがそこは我慢した。

たまにクロッチが見えるが、トイレの後のふき残しか、おりものというものかはわからないが割れ目に沿ってだろう、黄色いスジが

出来ている。きっとこの筋の元の粘液も匂いに含まれているのだろう。

 

2ラウンドが始まった。俺は我に帰るとエロい事ばかりを考えていてマウスピースを洗っていない。

「朝倉姉ェ……ごめん、マウスピース洗うの忘れた」

そう言うと少し考える顔をした後

「インターバルの出し入れだけで、今日は洗うのはナシにしよう、その方がウケるし」

そう言って朝倉姉ェはニッと笑うとマウスピースをくわえ、戦闘へと走っていった。

「そういうもんなんか」

俺はそう呟いた。気がつくとこの世界に引き込まれて起こる色々な事を当たり前だと受け止められるような気がしてきた。

しかし相手はチャンピオンだったのか。きっとボコボコにされるだろう。

純粋な表ボクシングのように打たれすぎで危険だからすぐに試合中止されるがここはそうでは無いだろう。

うん、多分無いだろう。

 

相変わらず朝倉姉ェはひたすら左右のフックを食らっている。

飽きずに繰り返されるのは、麻子姉ェの口から溢れ出す唾液が止まらないからだろう。相手の赤いグローブも唾液でぬちゃぬちゃになっている。降ったら唾液がビシャッと床に叩きつけられるのではないかと思えるほどの量だ。

しかし1ラウンドのように2ラウンドを終わらすのは単調でつまらないのだろう。相手選手の左右のフックは胸やボディを狙うようになってきた。Eカップの胸にパンチがぐにゅっとめり込み、乳首の向きがグンッとかわる。とても柔らかそうに見える乳だ。モチを杵と臼で付くのを見たことがあるがあのような感じだ。ぐにゅっ、ぐにゅっと形を変形させ、「うぐっ、うぐっ」と朝倉姉ェが苦悶の表情を浮かべる。ボディを撃たれた場合、腹筋が軽くついた引き締まったボディにグローブがめり込むと、今度は目を見開いて口からマウスピースをはみ出させる。

 

「観客の皆さん、これからチャンピオンがチャレンジャーを料理しますが、おっぱい、ボディ、どっちにしましょうか、お客様のお手元にあるボタンで集計しますので押して下さい! 決まった時点で中央のビジョンに映し出されます」

アナウンスの女性の声が響いた。客席がガヤガヤしている。

 

しばらくすると「おっぱい」と上部スクリーンンに文字が出て拍手喝采となった。

相手チャンピオンは完全に胸を打つスタイルになり、朝倉姉ェの張ったEカップの乳房はぐにゃぐにゃ変形させながらひたすら殴られる。一発一発に「うぐっ、あがぁっ!」と苦しそうな声がマットの上に響きわたる。

 

「さて朝倉選手、胸を殴られて殴られて、イってしまうのか!? このまま無様にイってしまうのか!?」

会場のヒートアップを加速させようとしているのか、アナウンスも絶叫するかのように叫ぶ。

バスッ、バスッ、バスッ

永遠にこれが繰り返されるかと思った頃「うっ!」と朝倉姉ェは大きなうめき声を出した。そして目をカッと見開いて

体をプルプルと震えさせている。

相手チャンピオンは手を止めて笑った。そして言う。

「イくんだねっ! じゃあこの一発でイってしまいなさいっっっ!」

 

ぐむんっ!

 

「うああああああっ!」と朝倉姉ェの乳房から、勃起している乳首が絶頂したペニスのように上下運動をさせながら

乳液をどぷっ、だぷっ!と吹き出して仰向けにダウンした。

ダウンした後も射精のように感覚を開けながら乳液をどびゅっ、どびゅるるっ。と大量に吹き出している。

 

「絶頂が来ました! たった2ラウンド目で朝倉選手、Eカップの乳をめった打ちにされてイってしまった! 甘ったるい乳液を

ぶちまけてイった! イったぁ〜っ! 絶頂です!」

アナウンスのテンションは相変わらず凄まじい。

俺は女性のように胸が無いのでわからないが、ひたすら殴られるとああなってしまうのかと思った。

朝倉姉ェは体を痙攣させている。性感帯であるが上に敏感で、いざ攻撃されると凄まじい刺激を受けたようになってしまうのだろう。

そしてイってしまうとは思わなかった。

(もっと続けてみたい。どれ程の内容のバリエーションがあるのかもっと見たい)

俺は素直にそう思った。

 

グラグラしながら朝倉姉ェは立ち上がった。さすがに逃げにまわるかと思ったがそれは許されない事だった。

上のビジョンへ「ボディ」と表示された。

胸かボディか、どちらかを選べるわけではなく、ただ順番が決められただけだったのか。

相手チャンピオンはサッと朝倉姉ェの懐へ入ると思い切りボディを連打し始めた。

腹筋を入れて対抗しようとしているのだろうが、次々に放たれるボディの連打の数か、一発の重さか、それはわからないが

パンチは次々と食い込みめり込む。

朝倉姉ェはイった目をしながら、口にエサをいっぱいに放り込んだリスのように両頬を膨らませて耐えている。

どすっ、どすっ、どすどすっ、どすっ。

「うげぇぁぁぁっ!」

朝倉姉ェは遂に耐えれなくなたのか口を開いた、その口からは透明だが胃液が大量に吐き出された。

嘔吐しているかのように体を揺らして、一定の間隔を持ちながら、ばしゃっ、びしゃしゃっと大量に口から出る。

ビデオカメラを持った女性がその吐瀉物を映し出し、そこへ上から新しく次々に吐き落とされる様子を映しながらマイクを口へ持っていく。

「遂にボディで嘔吐しました朝倉選手、これはシャレになりません。唾液でリングの上を汚すのはまだ良いですが、ここまで漂ってくる

程に胃液を大量に吐き、汚染しております!」

「うげぼっ!」

びちゃっ、びちゃっ、びちゃびちゃっ、ぼちょんっ!

マウスピースが吐き出され、液体をまわりにまき散らすように乱舞した。

「リングの上にマウスピースが吐き出されました! 汚い言い方をすればゲロです。ゲロまみれのマウスピースが汚くマットの上を

跳ね回りました! これは汚い!」

それでも朝倉姉ェは殴られ続け、遂にはパンツのクロッチである部分がじわっと黒くなったと思うとチョロチョロと太ももを液体が這って

落ちていき、ジワッと水たまりに加わる。

「おーっと、失禁です! 朝倉選手失禁です! 失禁をした場合のルールとしてパンツを脱がなくてはなりません!」

アナウンスと共にレフリーが選手二人の相手に割って入って、朝倉姉ェのパンツを脱がした。

すぐにそれを裏返し、クロッチ部分をビデオカメラを持った女性が狙って映す。俺は見上げてスクリーンを見る。

マンスジというか、朝倉姉ェのマ○コの筋のあとが黄色くしっかりと見て取れる。

「貸しなさいよ」

相手チャンピオンがレフリーからパンツを取り上げ、クシャッと丸めて匂いをかいだ。

ビデオカメラはその匂いを嗅いでいる姿を写している。

「カメラさん、移してる? 声入ってる?」

「オッケーです」

相手チャンピオンの言葉に、ビデオカメラを持った女性は親指を立てた。

 

「さて、もう汚いものを散々ぶちまけたこの女だけど、このパンツの汚さも見れてる? この女、汚すぎ、臭すぎ」

チャンピオンは勝ち誇って言う。

「こんな童顔で可愛いコがこんなに汚いパンツ履いてる。ちゃんと洗ってるのかしら? よっぽど汚いマ○コしてるんで

しょうね! それにゲロ臭いしそれに負けじと汗のツーンとする匂いもする。今日の相手は散々だわ」

 

俺は馬鹿かもしれない、非常識かもしれない。だが興奮してしまっている。

 

「さて今日の試合、負けたらここにいるお客さん全員がリングに群がって良い……まあ公認で犯していいのよね。それに当たって

、もうこの程度で良い? それともボッコボコがいい? 集計しようか」

チャンピオンの一声でアンケートが開始され、頭上のスクリーンには「もっとボコボコ」と観客達の選んだ統計の答えが出ていた。

「さあ踏ん張れよ、もうインターバルは飛ばしてナシにするから」

相手チャンピオンはほぼ裸になった朝倉姉ェにファイティングポーズをとらせた。

「あなたもやられているといえ、プロでしょ? 最後までやりぬいてもらわないとね」

 

こんな最悪な状況の中、朝倉姉ェは踏ん張っている。これから散々殴られるのを知っていながらも踏ん張る。

 

その朝倉姉ェの体中にパンチが打ち込まれる。

フックで頬にパンチがめり込み、口に残っていた胃液か、新たに貯められた唾液かが吐き出される。

「マウスピースだけはくわえさせてあげる」

相手チャンピオンが口にマウスピースをねじ込む。そして袋叩きを再開した。

殴る、殴る、殴る。これは確かに「裏の世界」でしか見られない光景だろう。

 

俺はリングサイドで見続ける。ただ立ち尽くして見続ける。

少し、狂ってしまおうかと思った。この異常な空間の中で裸になり、オナニーを始めても良いかもしれない。

この狂気的な場は慣れてしまえば自分自身を全て開放してしまえるかもしれない。

頭でグルグルとそういった事を考えながら立ち尽くして見続ける。

 

朝倉姉ェの口から大きくはみ出たマウスピースが血に染まっている。左目が腫れて塞がれて、殴られている部分全てが青痣を作っていたり

赤く腫れ上がっていたりする。

血がボダボダッと足元に垂れている。一体どれだけの液体や粘液がマットの上に凝縮されているのだろうか。

 

「それではっ!」

相手チャンピオンが雄叫びをあげた。

「基本ですがボクシングの試合でイくのはアッパー。お客さんたちのペニスから発射される精子のようにマウスピースが打ち上げられます。

ご覧ください!」

 

拍手喝采がしばらく続き、会場はシーンと静かになる。

もう朝倉姉ェの目は見えていないようだった。ただ立って肩で息をする。それだけだ。

 

 

「うおりゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

相手チャンピオンが大きなモーションで右アッパーを打つ。

 

ぐっしゃぁぁぁぁぁぁぁ!

 

「ブっはぁぁぁぁぁぁ! 朝倉姉ェの断末魔が響きわたり、口からマウスピースが吹き上げられる。

血みどろになった真っ赤なマウスピースが吹き上げられ、観客のほとんどの目がその物体に注目する。

血の奇跡を作りながら飛び上がるマウスピースは物凄い勢いだ。

 

 

血の華が咲いた。

そして重力に引き戻されて落下を始め……。

マウスピースはびちゃぁっ! びちゃぁっ!と大きく何ども何ども跳ねながら自身をアピールしている。

そんな中、朝倉姉ェは立ち尽くし、目に色は無く顔は上をむいたままだ。

そして

「ぐぅぉっ、ごぶぉっ」

と醜い声を出して、ごぼりごぼりと大量に泡を吹いた。

「がぶっ、がぶがぶっ、ごぶがぶ」

泡は胸を伝ってどんどん下へ降り、マットの上の液体としてそれは追加された。

なかなか止まらない。

「ごぶぉっ、ごぶごぶごぶっ」

散々泡を吹き出した後、朝倉姉ェはヒザをドンとついて、ゆっくりあおむけに倒れた。

受身など採れるほどなく、顔面から自身の混ざり合った液体の上にビシャッと倒れた。

 

「さあお楽しみの時間です、今日こられたお客様は喧嘩をしないよう、いじってやって下さい。

まあ暴行と行っておりますが挿入は無し、暴力は無しではありますが、楽しんで帰って下さい。

純粋にマ○コの匂いを嗅いだり舐めたりするノーマルプレイなんかも楽しいですよ」

チャンピオンは観客席にそう伝えるとぺこりと一礼して去っていった。

リングの上で無様にうつぶせ状態で倒れて動かない朝倉姉ェ。

俺はその様子だけは見たくなく、朝倉姉ェの控え室に逃げ帰った。

 

そこで悲しいのだろうが、色々な興奮はあった。俺はその場で罪悪感と戦いながらオナニーをした。

洗面所へ大量に白濁液を何度も何ども射精して疲れ、その場に憔悴しきって倒れた。

肩で息をしていたがしばらくすると落ち着いてきた。

ゆっくり立ち上がるとたまっていた白濁液を水で流した。

顔をあげると正面に鏡が有った。

「俺、朝倉姉ェに好きって想いを抱ける権利なんか……ねえよな」

そう呟いた。

 

朝倉のドクターチェックが終わり、タクシーで俺の部屋に戻る。

 

 

 

「今日は特別にキつかったけどこれがウチの仕事。手伝ってもらって悪かったの」

横になってグッタリしたまま、朝倉姉ェは呟くように言った。

 

 

 

「ウチはアリジゴクになんてようならんかったわ」

その言葉に俺は体ごとピクリと反応してしまった。

「なんじゃろね、ウチはアリジゴクになりたいってまだ思っちょるけど、今はウチが子供の頃のように

アリジゴクにハマってしまったんじゃろうか」

俺は黙っていた。

「こういう場合のダメージは蓄積せんから、明日の朝になったら出ていくわ。ほんと、騒がせたね」

「……ただ迷惑じゃあ、なかったがの」

俺はようやくそれを言えた。

「本心だったら嬉し。でもなんか、ケンジにはウチの全てを教えて行こうと思ってね」

「……そうか、それに関してはよくわかった」

「あーあ、ウチは堕ち続けてる。何なんじゃろうね」

 

 

「まだじゃ」

「え? ケンジ何って?」

「じゃけぇ、まだじゃって」

「まだって?」

「アリジゴク、俺になら手伝いになれるかもしれん」

「ケンジ?」

「俺なら朝倉姉ェの力になれるかもしれん」

「ケンジは優しいから無理無理」

力なく朝倉姉ェはフフッと笑った

「まあ、従姉弟って結婚は出来んけどの」

「何言ってるの?」

「わからん、何じゃろうか。俺は朝倉姉ェについて行ってもええ気がする」

「そんな事……」

「ええ。とりあえず今日は寝よう。起きてから、俺とよく話し合ってくれんか?」

「え? ええ。ええよ、起きてから」

「俺が起きたらいなくなってるってのは絶対ナシな! 約束せえよ!」

「う、うん、ウチは朝になってもここへおる」

「ああ、じゃあ布団敷くからな」

「……ケンジもウチと同じなんかもしれん」

「えっ?」

「ようわからん、あいたたた。布団あると楽かな」

「ああ、寝よ寝よ」

 

外は明るい。そんな中、ケンジは寝ようと目を瞑った。

朝倉は相当疲れていたのか、スースーと寝息をたてて寝ている。

ケンジのその瞑った目の奥にあの日の夕方、アリ地獄をキラキラした目で見下ろしている少女が見える。

 

 

「ウチ、アリジゴクになっちゃろうと思っちょるんよ」

その時そう言った女の子は、確かにそこにいた。

 

 

 

 

                                       END