《DENKO!》
かつてこのA地区地下ボクシング(といっても地下で試合をするわけではない)には
兵頭小百合と青空美由紀という最強のボクサーがいた。
二人は卒業して行ったが、未だその二人に憧れている新入生がいる。
銭林デンコ。
期待のホープでも何でもない。体の小さな女の子。
「目指すは美由紀先輩、小百合先輩なのだ!」
と発言しつつは、いじめグループにボコボコにされている。
この学校の成績は相手を倒したときに手に入るマウスピースの数。
デンコはいまだ自分の分を一個しか持っていない。
この学校(A地区)は学費がいらない。それどころか試合をすれば金が入る。
さて世の中そんなに甘くない。まず最初にマウスピースは二個支給される。
そのうちの一個は毎年恒例の「新入生狩」でほとんどの生徒が失う。
ではあと一つ。0になればどうなるか。
それは退学。しょっぱなからふるいにかけられるのだ。
だがデンコは元気いっぱいにロードワークをしている。
銭林デンコ。
元気の塊。
「今日も走って走って体力つけるのだ!」
デンコが走っていると、遠くの廊下で鼻歌を歌って歩いている先輩を発見した。
「あ・・・あれは草野美佐子先輩・・・」
美佐子は美由紀との卒業試合で凄まじい試合をした選手だ。
(スパーリング!スパーリングを頼むのだ!)
デンコは美佐子に走りよっていった。
「美佐子せんぱぁぁぁぁぁぁい!」
飛び掛らんばかりに走りよっていく。
「わっ!」
美佐子が驚いて裏拳を打った。
ぼこっ!
デンコの顔面に拳がヒットして、鼻血がぴゅーと出た。
「みさこせんぱい・・・スパーリングで鍛えてほしいん・・・だな・・・」
そう言うとデンコはあおむけに倒れた。カエルのようだ。
「何だすかぁ?こいつは?」
後ろから美佐子になついている後輩、零が来た。
「美佐子先輩、なんかスパーリングやってほしいみたいですよ?」
「ほほぅ!それは骨のありそうな奴だすな!やってやろう!」
「でも美佐子先輩・・・この娘、なんか倒れたままガチガチに固まってますよ」
「それじゃあ、お神輿みたいにして運ぼう、零、足の方持って」
「はーい♪」
「汗くさっ!まあいいか、運ぶだすよー、いっちょシゴいてやる!」