DENKO!

「ぶわっくし!」

自分のくしゃみでデンコは目を覚ました。

「えーとぉ・・・昨日は万里さんから逃げてぇ・・・あれ?」

屋上なのに毛布があり、デンコはその中にもぐっている。

横には万里が寝ていた。

「うわわわわわぁ!」デンコの叫び声で万里も起きた。

「何だ、起きたのか」万里は背伸びをする。

「しょしょしょ・・・しょしょしょ処女!」デンコは自分の股間を触る。

どうやら無事なようだ。

「馬鹿か、ただ部屋にも戻らないお前をずっと探し続けて、ここにいたから

いっしょに寝ようと思っただけだ」

「部屋につれて帰ってくれたらよかったのだ!」

「私から逃げるお前を捕まえてか?難しいことを言うな」

「しょんぼり・・・ありがとうなのだ」

「まあ、気にするな・・・・くしゃんっ!」

「風邪ひいたのか?」

「まあ、気にするなってことよ、満月見れたしな」

万里は毛布をくるくるたたむと、その場にへたりこんだ。

「あれ?おかしいな」

「おかしいのだ!」デンコが万里のおでこに手を当てる。

「熱が出てるのだ!」

「まあいっか」

「良くないのだ!背中に乗るのだ!医務室まで行くのだ!」

「おいおい、背負えるのか?」

「デンコスーパー二号!ぶるるん!乗るのだ!」

「一号はすっとばすのか」

「考えてなかったのだ!とりあえず乗るのだ!」

「よいしょっと」

むにゅ

万里の胸がデンコの背中に当たる。

ドキドキドキ・・・

「万里さんって・・・胸あるのだ・・・うらやましいのだ・・・」

「揉むか?」

「揉まないのだ!しっかりつかまってるのだ!」

「わかった」

 

「とうっ!」

 

ゴンッ

「あべっ!」

背負った背の高さはわりとあり、デンコが飛び上がるようにスタートしたので

ドアの上に万里の顔面がぶち当たった。

どしゃ・・・

万里が鼻血を吹いて後ろに転落した。

「あわぁぁっぁぁぁぁぁ!万里さんに恐ろしい事をしてしまったのだ!」

「う〜ん」万里がうめきながら横たわっている。

「医務室の先生を呼ぶのだ!」

デンコは矢の如く走った。

「医務室医務室・・・ここなのだ!」

がらがらっ!

そこにはKがいた。

「ようデンコ、知恵熱でも出たか?広辞苑はよしとけよ」

「違うのだ!万里さんが大変なのだ!」

「大変?すぐに呼べ!」

「無理なのだ!」

「何?相当ひどい怪我なのか!?」

「すぐ来るのだ!」

 

 

 

ごんっ!

「あたぁっ!」

現場でKにデンコは拳骨を食らった。

「鼻の骨折れてたらどうするんだ・・・ったく」Kが慣れた手つきで万里の顔に絆創膏を貼っていく。

「デンコ、何見てんだ?」

「K先生は医務も担当しているのか?」

「ああ、大体の機関は担当出来るな」

「凄いのだ・・・」

「お前みたいな馬鹿がいなきゃ、もっと楽な仕事だよっと」

Kがまだ気絶している万里を背中におぶる。

「万里さんを頼んだのだ!」

「ああ、まかせとけ!迷惑女!」

 

こうして忙しい朝は終わった。

寒かった朝を少し過ぎ、ぽかぽかと暖かくなってきた。

「ロードワークでもするのだ。走ってナンボのデンコちゃん。なのだ」

デンコは階段を降りて校庭へ向かう。

ふと気が付いた。

校庭には一人、先にロードワークをしている女子生徒がいる。

かなり走りこんでいるらしく、汗だくだ。

その生徒がふと、デンコに気が付く。

「やあ、デンコさんでしょ?」

「あ・・・そうなのだ・・・デンコなのだ。何か用か?」

「いやぁ、デンコさんが毎日走りこんでるの見て、やってみたんですけどね」

「結構ハードワークなのだ」

「いや、思ったより楽だなーって思っちゃいました」

「む・・・」

「試合見ましたよ、スタミナだけで勝てるんだったら私楽勝だなって思いました」

口調は決して零などのように天然発言では無い。挑発的だ。

「ねえデンコさん?試合やってみればわかると思うんですけど、どうです?」