《DENKO!》
「というわけなのだ〜」
デンコは今起こった妨害行為を涙ながらに万里へ訴える。
「葉桜薫か・・・厄介な奴とは聞いていたがな」万里は静かに答えた。
「やっぱり自分はボコスカお子様みたいにパンチを滅茶苦茶に打つしかないのだ」
デンコも自分のファイティングスタイルに不満を持っているようだ。やけくそに言う。
「葉桜薫は、確か弓道部のキャプテンを昔やっていた事があるそうだ。集中力はものすごいモノがあるが」
「あるが?何なのだ?」
「それにプラスして、こうやって嫌がらせの根回しで相手選手の首が動かなくなるまで追い詰めると聞いたことがある」
「最悪の相手なのだー」
デンコは絶望して頭をかかえたまましゃがみ込む。
「デンコ!お前部活とかは何やってた!」
「帰宅部なのだ」
「スキル無いな・・・」
「絶望的なのだ・・・今回は負けるのだ・・・」
「負けるのか?」
「うん、もう何もかも駄目なのだ」
万里はそのボヤいているデンコを冷たい目で見ていた。
「がんばりだけが取り得で魅力だったけど、今のアンタにはそれもないね」
ぐさっ!とその言葉にデンコの胸は突き刺された。
うるんでいたデンコの目に涙がじんわりと出てくる。
「・・・」
黙って万里はその場から去って行ってしまった。
「ど・・・どん底なのだ・・・」
デンコは必死に考える。
あと半日程度で薫に勝てるような戦法をあみ出さなければならない。
廊下で体育座りしながら、イライラと両足をばたつかせながら考える!。
しかし、考えるほど自分の武器の無さに絶望するだけだった。
視聴覚室にて
ドアが乱暴に開かれる。
そこにたむろしている薫とその一味はその方を見た。
万里だった。
「おや、万里さん、一匹狼のあなたが何しに来たんですか?」
薫は先輩であるはずの万里にも大口を叩く。
「ここは私たちが親睦を深めようと集まってるんです、空気冷えますから他へどうぞ?」
「そうはいかない」万里は静かに言った。
「ひょっとして、デンコさんの肩を持って?ありえないんですけどね」薫の挑発は続く。
自分がある程度の強さを持っているが故のビッグマウスなのだろう。
「ここへ来たのはとてもシンプルな理由だ」
万里は挑発にはビクともしない様子で、さっきと同じように冷静に話す。
「シンプル?教えて欲しいですね」
「お前らここから出て行け、まあ強制的にも・・・な。・・・覚悟はあるか?」
そう言って万里は後ろのドアを閉めた。