DENKO!

「そのやり方はあまり賢くないですね」机の上で両手を組んでいる薫が言った。

「どう言われようとかまわん、ここから出て行くか?力ずくで出されるか?」

万里は冷たく静かに言った。

「いいですよ?出て行きましょう、デンコさんに繋がってるあなただ。私と一戦交えて

その情報を元に作戦を立てるつもりでもあったんでしょう?」

その通りだった。万里の行動は情にかられて、やけくそに動いたものではなかった。

「・・・じゃあこの視聴覚室は使わせてもらうね」

万里が言うと、薫と取り巻きの連中はゾロゾロと部屋を出て行った。

「待て」万里が薫を引き止める。

薫はため息をついて、バレていたのかというあきらめの顔をしてビデオテープを出した。

「抜け目が無いな」万里はビデオを取り上げて言った。

「お互い様で」薫は冷静に言葉を返す。

 

 

デンコは廊下の隅でまだ体育座りで悩みこんでいた。

(悩んでいるってことは、ホントはあきらめてないって事だな)万里はフッと笑ってデンコに声をかけた。

「おい、視聴覚室、使えるようになったぞ、ビデオで少しは知識を入れとけ」

デンコは顔を上げる。

少し笑顔で、ビデオテープを片手に持っている万里がそこにはいた。

 

 

真っ暗な視聴覚室に入る。

万里は電気を付けた。

そして「やはりな・・・」と呟く。

デンコが近づいて見ると、ビデオテープのテープ部分が切断されていた。

「やられた・・・のだ」

デンコは又、力が抜けたように椅子に座った。

「ばーか」万里は想定内のようにデンコに言う。

「だって、せっかくのビデオが・・・」

「そう?出し抜かれたのはあっちだよ」

そう言うと、万里は肩からさげているバッグからビデオテープを取り出した。

「見たかったのはこれ、騙し合戦に勝ったのは私達ね」

そのテープにはラベルも貼っていなかった。

「何なのだそれは?」

「これ?あんたみたいな人間が困らないように、いや、あんたみたいな人間にこそ見てもらいたいビデオ」

「だから、何なのだ?」

「美由紀さんと小百合さんの作り上げた戦術ビデオテープ。存在は私しか知らない」

そう言うと、電気を消してテープをセットし、スクリーンに投影した。

デンコは目を皿のようにしてスタンバイ。二時間程度の内容だったが、デンコにとっては有益な情報がたくさん詰まっていた。