《DENKO!》
ビデオを見終わって、デンコはふーと大きなため息をついた。
「役にたったか?」デッキからテープを取り出しながら万里が尋ねる。
「型破りな考え方な内容が多いのだ、でも何だか自信がついたのだ」
「そうか・・・本来なら人には見せないんだがな」
「ん?何でなのだ?」
「これは美由紀さん、小百合さんが私にくれた物だからな」
「見ちゃったのだ、大丈夫なのか?」
「さぁ」
「さぁって・・・」
「まあこれでもうこれを見せる者はいなくなった」
万里ははさみを取り出し、迷うことなくテープを切った。
「それでテープの内容を知ってるのは私と万里さんだけなのだ」
「そうなるな・・・私が見た後すぐに処分しなくて良かった。こいつは二倍役に立ったんだ」
「・・・」
「美由紀さんがな、最後に学校を出るときに、お前を頼むと私に言ったって話したよな?」
「聞いたのだ」
「美由紀さんを信じてるから、あの人の信じる人は無条件で信じる。それでいいんだ」
そう言って万里は明るい顔をデンコに見せた。
「万里さん・・・」
「いいって、何も言うな」
「この試合で勝ったら考えてる事があるのだ・・・」
「?何だ?」
「その・・・自分に自信が無くて語尾に「のだ」「なのだ」を付けてしまうのだ」
「ああ、方言じゃなかったのか?」
「こんな方言無いのだ・・・びくびく生きてきたから自分に自信が無いのだ・・・」
「そうだったのか」
「勝ったら、フツーの話し方にきっと変えれると思うのだ」
「そうか、じゃあ頑張れ」
何も聞かず、ただ万里はデンコの両肩をバンバンと叩いた。
それにデンコは笑顔で返した。
色々とあったが、一晩明けて試合の日がやって来た。