DENKO!

「デンコ!デンコ!」ぱしぱしとデンコの顔が叩かれる。

「うぬ・・・まだ寝たいのだ・・・」

「デンコ!試合だってば!」顔をたたいているのはK教員だった。

「ふぁ?試合・・・試合・・・」

現実がやって来た。

「試合!なのか!」

「寝ぼけてるのかデンコ!あと30分で試合だぞ!」

どっくんどっくん

デンコの小さな心臓が高鳴り始めた。

まわりの相部屋の女子生徒達は笑ってみている。

デンコを馬鹿にしているのだ。

「ししし・・・支度をするのだ」

マウスピースを掴んで更衣室へ行った。

学校から支給された青のグローブとトランクス。

トップレスは初めてだ。

改めて試合の格好を鏡で見る。

「ひ・・・ひんにゅうなのだ・・・恥ずかしいのだ・・・」デンコが顔を真っ赤にする。

あと15分。

下のほうの人間の戦いなので、前座扱いだが、デンコには人生が懸かっている。

「時間が過ぎないのだ・・・」

ガチャリ・・・ドアが開けられる。

「ども、今日あんたのセコンドやる万里(ばんり)です」

死んだ魚のような目をした女子生徒が更衣室に入ってきた。

「よ・・・よろしくなのだ・・・」

「あー、あんたいじめられっこのデンコ!」

「いじめられっこなのだ・・・」

「別に私はどうとも思ってないけど、まあ適当に指示出すわ」

「よろしくなのだ!」

話していると時間が経った。

「ほれ、行くぞ、ああ!胸隠すな!貧乳でも好きな人は好きなんだから」

「そう・・・なのか?」

「それに胸張ったほうがちっとはでかく見えね?」

「だっちゅーのみたいに前かがみになったほうがでかく見えるのだ」

 

「銭林デンコ選手!現在残りマウスピース1個!入場して下さい!」

アナウンスの声が響く。

「あばばばばば・・・テンパってきたのだ」

「行くよ、デンコ」

ばんっ!

デンコが花道をすごすごと歩く。

(観客は全員かぼちゃなのだ・・・かぼちゃなのだ・・・)

そう思うが、全員の目線は貧乳に集まる。

(親をうらむのだ・・・こうなるんだったらもっと揉んでおけばよかったのだ)

胸を隠したい気持ちをこらえて、リングの上にあがる。

 

「それでは駿河ナナコ選手の入場です!現在マウスピース2個です!」

(一個失ってもまだ後があるのだ・・・うらやましいのだ)

だがもっと羨ましいものがあった。

ナナコの乳はCカップ!

ゆっさゆっさ揺らしながらの登場。

堂々とリングにあがってくる。

 

そして簡単にルールを説明されてゴングを自分のコーナーで待つ。

 

「えーと・・・目標は・・・立つ!倒れても立つのだ!」