《ダスター氏の冒険》

 

「何よぉ!腕つかんだまま走るなってか、走るの早すぎだってば!」

かがみは、こなたに手を引っ張られながら必死に後ろをついて走る。

普通なら通らないような裏通りを二人は走っている。

たまにこなたの長い毛が風でなびいて顔を撫で、くすぐったい。

 

ふいにこなたが立ち止まり、かがみはこなたに後ろからぶつかる。

「うわっと!」

こなたはぶつかった反動でしりもちをついたが、こなたはビクともしなかった。

「ここだよ、ここ」

しりもちをついたままのかがみに、こなたは怪しい笑顔で話しかけた。

「いい話があるって何よこなた・・・あいたたた・・・」

「この中で一時間ちょいとバイトするだけで・・・」こなたの顔がかがみに接近する。

「10年前のレアフィギュアが貰えるのだ」

それを聞いてかがみはしばらく呆然としていた。

「ネットオークションでも手に入らないよー、こりゃ仕事受けるしかないでしょー」

マイペースに話すこなたに、かがみは段々と腹が立ってきた。

「あんたさぁ!私をこんなに走らせて、中でバイトかなんか知らないけどさせて、フィギュア一個って・・・」

「一個だけどなぁに?」

「私の取り分は!」

「うーん、考えてなかったなそりゃ」

こなたは顎に手を当ててあっさりと答える。

「いや、考えようよ」

「ほんじゃケーキバイキングにこれ終わったら行こうか。おごるさぁ!」

しばらく時間を置いて、しょうがない。というようにかがみはため息をついた。

「今回だけね、あんたに今回だけってのは通用しそうにないけど・・・」

「さすがかがみん、さすが」

「さすがしか言えんのか・・・」

かがみは立ち上がってお尻についた砂埃をパンパンと払った。

「この中にいるから、ダスターさん」

「ダスターさん?外人?」

「いや日本語喋ってるから日本人だよ」こなたはあっさりと答えた。

かがみはブツブツ言いながら建物に入るこなたに着いていった。

 

中に入ると、そこにはリングがあった。

「え?」かがみが何故リングがそこにあるのか驚いていると、後ろから声がした」

「どうもいらっしゃい、いやーボクの以来を受けてくれたんだ」

二人が振り返ると、25〜6歳に見える美青年が立っていた。

「あ、ダスターさんども」こなたが右手を挙げて挨拶をした。

かがみは少し頬を赤くして、黙って軽い会釈をした。どうやらタイプの男性らしい。

「さすがこなたさんだ、遅刻。うわさ通りだったね、待ったよ」

ダスターは遅刻をした事に怒るどころか、逆に嬉しそうにニコニコと笑っている。

「いやー、こいつが遅かったもんで」こなたが、かがみを指差す。

「こなたっ!!・・・あ・・・違うんですダス・・・ターさん!」

かがみの言葉にも、ダスターはニコニコと笑顔で無言でいる。

「何も問題無いさ、何もね。ボクみたいなマニアな人間に貴重なものを見せてくれるんだから」

「貴重?こなた、あんたどんな仕事受けたの?」ヒソヒソとかがみはこなたに話しかける。

「ははぁ、こなたさんは、かがみさんに何も話してないんだね」

ダスターはそう言うと、リングの方を見た。

「ボクシングさ、ボクは女子ボクシングのマニアだから君たちの試合を見たいんだ」

そのダスターの言葉に、かがみは驚いた。

「わわわわ!私殴り合いのスポーツなんて出来ません!」

そのかがみの言葉にダスターは笑顔で答える。

「軽くポフポフ殴りあうだけで結構だよ、本気で殴りたいならやってもいいけどね」

「だ、そうだよかがみん、お遊びでフィギュアGET!最高じゃないか」

「お前は最高だよね〜」フィギュアに固執するこなたに、かがみは白い目を向けて言った。

「正直、かがみさんが来てくれてよかったよ」ダスターはそう言って、かがみの首に軽く手をかけた。

「はっ!」かがみの頬がまた赤くなる。

その瞬間軽く、ほんの軽くかけられた手の辺りがチクリとするのをかがみは感じた。

「んー?」ダスターが手をのけると、かがみは軽くそこをポリポリと掻いた。

ダスターはニヤリと口元を歪ませたが、こなたとかがみは気がつかなかった。

「ハードな試合じゃないだろう?だから二人ともセーラー服のままでいいよ」

ダスターの言葉に、こなたはニヤリと笑ってセーラー服を脱ぎだした。

「じゃじゃーん、スク水スタイル!」こなたは満面の笑顔で両手を挙げてアピールした。

「おお!それは嬉しい誤算かな?スクール水着でボクシングをしてくれるのかい?」

ダスターは喜んで拍手をする。

「そうそう、これが簡易に付けれるグローブ。それからこれが口に装着するマウスピース。

奥の部屋でお湯が使えるから、二人とも口に合わせて作ってきてくれないか」

そう言ってダスターがマウスピースの新品を二つ渡す。

「かがみん、マウスピースの作り方は私わかるからいこっ」

こなたはかがみの手をとって奥の部屋へと入っていった。

リングのある部屋にはダスター一人。

「さて、ポフポフとかるーいボクシングなんて期待してないからね、かがみさん♪」

そう独り言を言うと、ダスターは、かがみに触れたほうの指から細い針を取った。

「それにしてもスク水とは本当にいい誤算だった、萌える。萌えるなぁブツブツ・・・」

ダスターは建物のドアを閉め、鍵をかけた。