《祭》

「香奈、香奈〜」

浦崎香奈(うらざき かな)は高校三年生。得意な分野は体育。

放課後・・・

帰る香奈の後ろを同級生の篠崎信夫(しのざき のぶお)が追いかけてくる。

「お前、本気か?」

「本気よー」

「ボクシングっちゅったら、鼻血出たり青たん作ったりして痛いじゃろ!」

 

 

毎年行われる夏祭り。学校から出し物をするのだが、去年は学生プロレス。それが大盛況。

今年はボクシングで行こうという事になった。

しかしこの学校はヘタレばかり。男は誰も参加を名乗り出なかった。

ここぞとばかり、男まさりの香奈が勢い良く立候補した。

相手はまだ決まっていない。

「なぁ、幼馴染がボコボコになるの見とうないって!」信夫は食い下がる。

「ウチはボコボコにならんけぇ大丈夫」冷たく香奈は突き放した。

確かにどのスポーツをさせてもある程度の成績は残す香奈。

「新境地って奴か?」信夫は香奈の横に並んで言った。

「まあそんなもん?とりあえず信夫が心配する事はないけぇ」

香奈は信夫を見てニコリと笑った。

「笑ったっちゅうことは、機嫌はそげに悪うないちゅうことか」安心したように信夫は言った。

「機嫌?」

「たまに香奈は、怒ったような雰囲気出すけぇ、なんか話しかけるのも怖い時があるんじゃ」

「ウチはそげに機嫌悪い時ないよ?」

そう言ってカバンで軽く信夫をどついた。

「ほんで、ボクシングってルールとか分かるん?香奈はやったことないじゃろ」

「うん、これから本屋に寄って本買おうとおもうちょる」

 

 

「信夫〜、何しちょるんか!」

信夫はバスケ部の部長。

顧問の教師に怒られるように呼ばれた。

「やば、またの!香奈!」

信夫は必死に学校へ戻っていった。

香奈は振り返らずに、左手を挙げてバイバイした。

「新境地か・・・」香奈は独り言を呟いた。

 

「とりあえず、なんか刺激がないと進路進路で頭が変になりそうじゃけえね・・・」