《祭》
香奈は家に帰ると、宿題を始めた。
(信夫は、私のモノ)
静子の言葉が頭から離れない。
「最初にハッキリ言わんかったウチのせいじゃ・・・」
香奈はシャーペンを置くと机に突っ伏した。
そのまま寝てしまったのか、夢を見た。
信夫と静子が仲良く手を繋いで歩いている姿を香奈が見ている。
(信夫っ・・・・)香奈が声を出そうとした瞬間
「げほ・・・」
血と唾液といっしょにマウスピースがボトッと口から落ちた。
「え?」
両手にはグローブ。
顔をぬぐうと、血がべっとりと付着した。
「信夫・・・」
香奈は自分の吐き出した血と唾液にまみれたマウスピースを見ていた。
そこで。目が覚めた。
「夢?・・・」
香奈はだらしなく涎を垂らして顔を上げた。
「宿題もやる気にならん・・・」
祭りの試合はもうすぐ。だが香奈のメンタル面は揺らいでいた。
「ほんまは逃げたい・・・ウチどうしよう・・・」
涙が1滴ノートにポタリと落ちた。