《祭》

加奈には友達と呼べる友達はいなかった。

今が青春とも考えたことはかった。

そして生まれつきなのだろう、目つきがキツい。

なので積極的に話してくるクラスメートはいなかった。

それでもたまに、学校の帰りにクラスメートに喫茶店へ誘われる。

結果は自分が一番だけ、真っ先に運ばれてきたジュースを飲んでしまいクラスメートの愚痴や今流行りの話をうんざりするほど聞かされる。

愚痴を聞いていても時間が勿体無い、テレビも見ないので世間話に付いていけない。

それ以来、加奈は喫茶店に誘われても用事がある事にして断っていた。

 

カラオケに誘われたこともあった。

皆が次々に曲を入れていき、聞きたくも無い曲を延々と聴かされる。

これも耐え難い苦痛だったのでもう誘われても断ろうと思って警戒していた。

 

そういった事が積み重なり加奈は、クラスでトップクラスの頭脳の持ち主で、なかなか近寄りがたい。

そういう人間なのだと、クラスメートは皆思っていた。

しかし加奈は皆と仲良くやりたいと思うには思っていた。

思ってはいたが、今までの胸に沸いてくる孤独感が、彼女を無口に、心を開かないようにしてしまった。

 

隣の家の信夫は、そんな加奈に積極的に話しかけてくる。

よく宿題や、ノートを借りに夜に電話をしてくる。

それがあまりの頻度の為、信夫は携帯電話だと加奈の両親にも迷惑がかからないと携帯電話の番号を交換しようと言ってきた。

それが続くと、加奈は信夫にだけは警戒しなくなった。

 

高校三年生、皆が進路を決めて受験勉強に急ぐ中で加奈は虚しくなって来た。

勉強のみで過ぎていく三年間。そこで初めて「心にぽっかり穴が空く」という表現がこれなんだなと強く感じた。

そんな時、学園祭のポスターでボクシングをやる事を知った。何でもいいからやってみようと加奈は申し込んだ。

小遣いは遊ばない分溜まっていたのでジムにも通うようになった。

 

そんな中、信夫に告白された。

加奈は頭がパニックになり、考える時間が欲しいと思って一度逃げてしまった。

その頃から信夫に近づいてくる静子の存在を知った。

そこまで来てやっと「信夫に近くにいて欲しい」という自分の気持ちに気がつく。

日に日に大きくなってくるその気持ちは胸が苦しくなる程だった。

信夫と静子がクラスで大きくなって来た時、加奈は信夫に思いだけは伝えようと思った。

 

孤独にも嫌気がさして来ていた。