《祭》
信夫が教室に戻ってきた。
香奈は気づいていたが、信夫の方を向かずに勉強をしている。
「はは、告白されてしもうたわ」照れたように信夫が笑う。
香奈のノートへ書き込んでいた手が止まる。
「そうなんじゃ、よかったじゃん」
そう言うと、香奈はまたノートに書き込みを始めた。
「ははは・・・はぁ」信夫は自分の机に座った。
「・・・どうなったか気にならんのか?」信夫は少し真面目な顔をして言う。
「・・・別に・・・」香奈の手は止まらない。
「ほうかほうか」
信夫は自分のバッグを持つと、帰ろうとドアに手をかけた。
「で、どうしたん?」
不意に香奈が話しかけてきた。
「ん?」信夫が振り返る。
「どうしたん?って聞いてるの」
「あ・・・ああ、同じ三年らしいんじゃけど、名前も教えてくれんと、好きですって言われてのぉ」
「ふーん」
「そのまま走り去って行ってしもうたわ」
「そっか」
「香奈、久々にいっしょに帰らんか?」
「あー、もうこんな時間か、帰ろうか」
「久しぶりじゃの、香奈といっしょに帰るのは」
信夫は嬉しそうに言った。