《祭》
「おー、夕日も沈んで暗くなるのぅ」信夫はぶっきらぼうに言った。
「そうじゃね、ちと教室で頑張りすぎたかも」香奈は学校を振り返って言う。
「香奈はボクシング・・・か」
「そうじゃね」
「・・・・・・」
「暗くて水溜り踏んで詩もうた」香奈が右足をぶらぶらさせる。
「バスケ部は食い物の出店でもするかの」香奈の行動を無視するかのように言う。
「ちょっと片足、はだしになるけぇ肩貸して」
香奈は信夫の返事を待つ前に肩を掴んで体のバランスを取った。
信夫は震える手で、香奈の手の上にそっと手を置いた。
「っ!」
香奈は手を払った。
「香奈・・・俺な・・・」
「明日までに靴乾くじゃろうか」信夫の言葉を遮るように香奈が言った。
「俺な・・・香奈・・・」
「・・・」
沈黙が続く。
「俺な・・・お前の事が・・・」
「いけん!」香奈が叫んだ。
「その先は言ったらいけん!」
「香奈?」
「言ったら・・・幼馴染の縁も切れるかもしれん・・・言わんで欲しい」
「・・・」
「あ、今日スーパーで買い物頼まれとった、一人で帰れるけぇ・・・」
香奈は一人で逃げるように帰っていった。
信夫は道沿いの草むらに倒れるように寝転がった。
完全に暗くなる頃、信夫は立ち上がって家へと向かった。