《祭》
日曜日。
香奈はボクシングジムの見学の予約を入れていた。
「よっ、香奈ちゃんだね」
気さくな兄ちゃんが待っていた。
「あの・・・ボクササイズじゃなくて」
「聞いた聞いた、本格的にやりたいんでしょ?」
「はい・・・」
「チャンピオンになりたい!とかカンタンに言ってくれちゃあ困るんだけどさ、
出し物の1試合の為に鍛えるってんなら手伝うさ!」
「ありがとうございます・・・」
信夫はその頃、静子とデートをしていた。
「いやー、最近のゲーセンって100円じゃないのな!」
信夫はUFOキャッチャーで取り損ねたぬいぐるみに向かって軽くガラスにノックをした。
「いや・・・取ってくれようとしただけで嬉しいです」
「そうか?でもくやしいのぅ、取りたかったけぇ」
香奈は汗だくになってサンドバッグを叩いている。
「いいよ、いいよー香奈ちゃん、ええカンジ!」
香奈の担当になってくれているのは「林健吾」。25歳の好青年だ。
顎鬚を少し伸ばして揃えているのがポイント。
しばらくすると香奈もさすがにへばって、サンドバッグを叩く手を止めた。
「香奈ちゃん、よう頑張った!なかなか女の子でここまでは出来んの」
香奈はその言葉を聞いて、健吾に少し笑顔を見せた。
信夫は静子と喫茶店へ入った。
「ここ、二回目じゃの、今日はパフェでも食おうや」
「はい・・・食べましょう♪」
(ひょっとして付き合ってるってことでいいのかしら)静子は頬を赤く染める。
「ジュースは一つでストロー二本でええかの?」
「えっ?・・・ばっばかっ!」静子の顔が完全に赤くなった。
「ええか香奈ちゃん、おなかにボール落とすけえの、腹筋しっかり入れといてな」
健吾はボールを持って、香奈はあおむけに寝る。
香奈は天井を見ながら、ふと信夫の事を考えた。
(違うんちゃ・・・信夫・・・違うんちゃ・・・嫌いじゃないんちゃ・・・むしろ好・・・)
ドボッ!
「あぐっ!」
腹筋を入れていない状態でボールが香奈のボディに落ちた。
「がほっ・・・がほっ・・・」
「香奈ちゃんどうしたんじゃ、ほらほら!バケツ持ってきた!」
「おぇ・・・」
ビシャビシャッと胃液がバケツに吐き出される。
吐き終わってしばらく経つと、又胃液が上がってくる感じがする。
「ぶへぇっ・・・」
ビシャ・・・ビシャビシャッ・・・・。
「はぁ・・・はぁ・・・」香奈はあおむけに大の字になった。
(信夫・・・)