《祭》

電話は信夫からだった。

「掛けたぞ。電話」

少し強がっているように聞こえる。

「あ、信夫・・・」

「何か用があるんじゃろ?」

「そう・・・じゃね」

「何か、何もないんか」

「今日休んだんじゃから、私の心配してくれてもよかろう」

少しムッとした言い方で香奈は言った。

「そういやそうじゃったの、風邪でもひいたか?」

「いや、風邪はひいとらんし、仮病みたいなもんよ」

「何じゃ、それだけか」

「信夫?」

「何じゃ?」

「答えをもう出しても遅いじゃろうか」

「答え?」

 

「・・・私に告白した事・・・」

「あれは即効振られたじゃろうが、何をいまさらいいよる」信夫は笑いながら答えた。

「付き合えないっていっとらんじゃろ?」

「え?」

「私、信夫となら付き合うてもええよ、答え遅れてごめん」

「え??」

「ただ、慎重に、大事に話を進めたかったんよ、ごめんね信夫」

「・・・そうなんか・・・」

「電話はそれで・・・」

「俺はなんちゅう・・・」

「信夫?」

「なんちゅうことをしてしまったんじゃろうか・・・」

信夫が一方的に電話を切る。

そして信夫は、頭をその場で抱えてうずくまった。