《アフター・ザ・ラストバトル  アナザー・ザ・ラストバトル》

カーン

1R終了のゴングが鳴った。

お互いさほどのダメージは受けていない。

「ただいま小百合」

美由紀は自分のコーナーポストの椅子に座る。

「うんおかえり、なんかやっかいな相手だね」

「うん、回避能力が凄いんだよね〜」

「美由紀、あれはボディを何とかして粉砕するしかないよ」

「力を抜いた瞬間にズドンと入れるしかないかな?」

「ううーん、それは無理。彼女の構え方は常に腹筋に依存してるから」

「つまり常に腹筋はガチガチ?」

「そう!だからやっかいなんだよねぇ・・・」小百合がため息をつく。

結果の出ないまま、2Rのゴングは鳴った。

 

 

美佐子は数歩歩くと

「美由紀ちん、次の技出すよ♪」と言って大きくのけぞった。

「がいせんもーん!」

どうやら凱旋門の意味らしい、ブリッジして橋をイメージしているようだ。

(打つ場所が無いな・・・どうしよう)

美由紀から見て、打つ場所はボディしか無い。

(とりあえず危ない範囲から少し離れて様子を見るか)

美由紀は距離をおいて様子を見ていた

美佐子は凱旋門の状態からいきなり跳ね起きると、ストレートを打ってきた。

「美由紀―っ!危ない!」

 

ぐしゃ・・・

 

跳ね起きるパワーにストレートのプラス。

パンチは伸び、美由紀の顔面にヒットしていた。

 

ぼどっ!

 

美由紀のマウスピースがマットに落ちた。

「こ・・・これが狙いだったのか」

ダンッ!

美由紀は一言言ってマットにあおむけに倒れた。

すぐにカウントは始まった。

スリーあたりでようやくうつぶせになる。

「ごほ・・・」

血の塊をマットに吐き出す。

カウントセブンでようやく立てた。

「出来るか?」

「はいはい、出来ますよ」

そう言うと、レフリーにマウスピースがねじ込まれた。

 

「やられたよ、さすが美佐子だ・・・ごほっ・・・」

「いやー、これ食らってそこまで平気な美由紀ちんも凄いだすなぁ♪」

(頭がぐらぐらする・・・ちょっと離れて様子を見なきゃ)

美由紀が後退する。

「いっぽーにほーさんぽー」美佐子が追い討ちをかけるように歩み寄ってくる。

心理作戦で敗北してしまった。

 

「じゃあフィニッシュブローだすよ!がーいせーん」

(凱旋門?)

「もんっ!」

美佐子のパンチが飛んできた。

 

「あ・・・」

気が付くと美由紀の後ろはコーナーポストだった。

 

ぐしゃぁぁぁぁぁぁっ!

 

果肉の潰れるような音。血みどろで飛ぶマウスピース。

そしてコーナーポストとパンチに挟まって顔のひしゃげている美由紀

美由紀は何も言わずうつぶせに倒れる・・・・が。

美佐子にクリンチをした。

「おー?美由紀ちんから抱擁だすか♪」美佐子は純粋に喜んでいる。

「はぁ・・・はぁ・・・」美由紀は虫の息だ。

 

ぼとっ・・・ぼとっ・・・

マウスピースが落ちてリングの上を跳ね回る。

「血を見ると興奮するだす♪もっとがんばって美由紀ちん」

美佐子は美由紀のクリンチをゆっくり離して距離をとった。

(やばい・・・立つ力も・・・ギリギリ)