《アフター・ザ・ラストバトル  アナザー・ザ・ラストバトル》

「美由紀ちんがもっと血みどろになるの見たいなぁ♪」

美佐子はアブナイモードに入っていた。

「このままもう一発凱旋門パンチを打っても立ち上がってくるかな?」

美佐子が美由紀の顔を伺うように覗き込んでくる。

「はぁ・・・はぁ・・・打ってみれば・・・」

美由紀は美佐子の目を見ずにそう言った。

「美由紀!さっき話した、あそこの部分!いけるかも!」

「ああ、私もそう思ってるンだ」

美由紀と小百合の会話に、美佐子はむっとした顔をした。

「凱旋門を破る気だすか?本気で行くだすよ!?」

「ああ、ハッタリか、ハッタリじゃないかは打ってみないとね」

美由紀が挑発する。

「2ラウンドももうすぐ終わりだすね・・・一発大きいの行くだすよー!」

「よしこい!」

「がーいせーんもーん!」美佐子が大きくのけぞる。

そしてパンチ!

ビュッ!

美由紀も同時にストレートを打つ。

「わぁぁ、あぶないだすな!でもそんなんじゃ当たらないだす」

お互いのパンチは外れた。

「んで、これはおとりの右ストレートで、狙いたいのは」

「ん?何だすか?」

「ここだぁぁぁぁぁぁぁ!」

どぐぅっ!

右手を出しっぱなしにしていた美佐子に、懇親の力を込められたレバーブローが

打ち込まれた。

「!!!!」

美佐子がダウンした。

「い・・・いき・・・いき・・・息が・・できな・・・い」

美佐子は悶絶してごろごろ転がっている。

「やったぁ美由紀!」小百合が大喜びをする。

「あんたが言ったときは無理だと思ったけど、やってはみるもんだね」

美由紀は小百合にウィンクした。

カウント7で美佐子は立ち上がる。

顔が真っ青だ。

「レバーブローだすか・・・初めてこんなに重いの食らって・・・ぶぇ」

美佐子は自分の足元に少量の透明な胃液を吐いた。

その後、さらに体をかがめた「おぅぇぇぇぇぇっ!」

ビヂャビヂャッ!

目に涙を浮かべて前回とは比較にならない量の胃液を吐いた。

「出来るか?」レフリーに聞かれる。

「ただ吐くくらいのパンチ・・・まだまだいけるだすよ!」

美佐子はファイティングポーズをとった。

カーン

2R終了のゴングが鳴った。

「凱旋門を破ったよ!すごいよ美由紀!」

小百合は美由紀の足のマッサージをしながら言う。

「あそこで破らなきゃ瞬殺されてたよ」美由紀は美佐子サイドを見る。

美佐子はぐったりして、時折バケツに胃液を吐いているようだ。

少しして、3R開始のゴングが鳴った。

 

「!?」

美由紀は驚いた。

美佐子が突進して来る。

「美由紀!多分回避型が無理になったから、スタイルを変えてくる気よ!」

小百合が叫ぶ。

美佐子は突進しながら雨あられのようにパンチを打ってくる。

美由紀には都合の良い相手のファイティングスタイルになったのだが・・・。

 

相手の手が多すぎて、決め手になるパンチが打てない。レバーブローを再度打とうとすると

向こうのパンチが飛んできて、ガードに手がまわってしまう。

「ちょ・・・ちょ・・・あんた玉砕する気?」

美由紀は思わず言う。

「そうだす・・・でも最後にお互い血みどろになって・・・まあとにかく血が見たいんだすよ♪」

「くっ!変態がっ!」

美由紀がフックを三発打つ。

ブッと美佐子の鼻血が飛ぶ。

だが美佐子のパンチラッシュは止まらない。

(レバーブロー打ったのにこのスタミナ?)

美由紀が押されている。

じきに美由紀の手が出なくなった。

コーナーポストへ追い込まれてのメッタ打ち。

美由紀も鼻血が出て、はみ出したマウスピースも血に染まっている。

「ストップ!ロープダウン!」

ようやくレフリーに止められる。

「ぶふ・・・」

美由紀が血みどろのマウスピースを吐き出してあおむけに倒れた。

長年色々な試合をしてきた小百合だが、美由紀のそのマウスピースには一瞬目を逸らした。

が、すぐにキッと倒れた美由紀のほうへ近寄って、マットをどんどん叩く。

「美由紀!そのまま倒れてちゃだめよ!パンチ酔いしてても寝ちゃだめ!」

「ふぁ?」美由紀がうつろな目をして小百合に目線を向ける。

(なんだろう?なんかふわふわして・・・あ・・・たてってことか)

カウント8で美由紀は立ち上がって、ファイティングポーズをとった。

試合再開。

美由紀の血まみれのマウスピースから血が滴って、口の端から垂れる。

「いい感じだす♪ボクシングは血まみれでやるもんだすよ♪」

美佐子の目は少しイっている。

「そして、わたすは凱旋門モードに戻って体力回復ぅ♪」

美佐子は腕を組んで挑発して来た。

「くっ・・・」

美由紀はパンチを打つが、同じようにのけぞってかわされる。

だが一つ異変があった。

「あんた、レバーブローの影響で、腰を左右にくねらす事できなくなってるね」

「あはっ、そうだす。でもそんなパンチはのけぞるだけで十分だすよ♪」

「そうだね、でも凱旋門を打ったら後悔するかもよ?」

「ほー、それって挑発ってやつだすか?」

「そうかもね、打つ?打たない?」

「んーーーー」美佐子は考える。

「ようするに左手で打ったらレバーは食らわないだすから・・・打ってみようかな」

美由紀の目が光る。

 

「がいせんもーん!」

(いまだっ!)

美由紀は美佐子の右方向から回りこんだ。

のけぞっているが、顔面が目の前だ。

いや、顔面よりグローブが目の前だった。

ぐしゃぁぁぁぁぁぁぁ!

美由紀のグローブとマット上に、美佐子の顔が挟まれる。

「ぶげろ・・・・」

ぶひゅっと音がして、美佐子の口からマウスピースが吹き出る。

美由紀がコーナーポストへ戻るが

美佐子の足はヒクッヒクッと痙攣している。

顔を見ると、血まみれで白眼になっている。

(立つなよ・・・)ひたすら祈る美由紀だった