《アフター・ザ・ラストバトル  アナザー・ザ・ラストバトル》

「すみませんっ!タオル投げますっ!」

零はタオルを振りかぶった。

「なんだと?」

美佐子は零を睨み付けた。

「ここまで来て、。そんな決着は誰もいい気持ちしない」

「ひっ」

美佐子の出す気に圧倒されて零はタオルを手に握り締めたままだ。

「わかり・・・ました・・・やめます・・・」

零は半泣きになってしまった。

もう自分がセコンドとして出来る事は無い。

だが相手の小百合はどうだろう?

しっかりと相手を洞察して、的確な指示を出す。

決定的な敗北感を零は感じた。

 

「さあ美由紀ちん・・・やろうか・・・」

「・・・ああ・・・」

美佐子の小細工は無くなった。

ただひたすらに出せる限りのパンチを出してくる。

ジャブ五発。

「ぷぅっ!」美由紀が唾液と血を飛び散らかす。

美由紀はそのまま幸運にもロープが後ろにあった為、倒れる反動を利用してストレートを打った。

バキッ!

衝撃で美佐子がドタドタドタッと後ろに倒れそうになるが、こらえる。

美佐子の右目は腫れ上がってもう見えないようだ。

ずる・・・ずる・・・美佐子がまた近づいてくる。

「ロープの反動・・・だすな・・・じゃあこれは・・・はぁ・・はぁ・・・」

どヴぉっ!

美由紀の鳩尾にパンチが打ち込まれた。

「ぷぱぁぁつ!」

美由紀が苦しさに顔を歪めてマウスピースを吐き出す。

マウスピースは二人の間にべちょっと落ちた。

それは血と唾液に包まれ、誰が見ても目を背けたくなるようなものだった。

「ボディが・・・効くだすね・・・」

どすっ!

更に美由紀にボディが打ち込まれる。

美由紀は倒れまいと足腰に力を入れて、プルプルと足が震えている。

「んっ!」美由紀が餌を口に含んだリスのように両頬をふくらませる。

「げっ!」

そして嘔吐した、繰り返し繰り返し。

(限界・・・きた・・・本当の限界・・・)

 

会場にアナウンスが流れる。

「これ以上のラウンドは危険な為、これより無制限、10カウント立てなければ負けというルールに変更致します」

 

「はは・・・あまり試合には関係ないけど・・・倒れた方が負けってことだす・・・よ」

アナウンスの内容と、今自分が優位な為、美佐子は元気が湧いてきた。

美由紀をロープに追い詰め、右、左とフックを打つ。

「ぶっ・・ぶふっ・・・ぶっ・・・」

打たれるたびに霧状の血と唾液をリング外に撒き散らす。

試合を見ている後輩達に降りかかり、悲鳴があがる。

徐々に美由紀の顔も腫れ上がってくる。

 

「かった・・・だすね・・・このまま・・・打ち続ければ・・・」

美由紀がダウンしようとすればその方向からパンチ。

出来るだけパンチをかせごうと美佐子は必死になった。

そして

美由紀の意識はなくなっているのか、トランクスの間からチロチロと液体が流れてくる。

失禁だ。

それを見て、さらに美佐子は勝利を確信する。

(アバラが持っていかれようとも、この試合は勝つ!だってここまで来たんだすから!)

ばんっ!

美由紀は半分気絶しながらもパンチを打ち返す。

ばんっ!ばんっ!ばんっ!

美佐子の顔面に三発打ち込んだ。

「くっ!」

美佐子は美由紀にクリンチした。

にちゃ

汗だらけの体が密着して、さながらローションプレイのようだ。

美佐子は美由紀の脇からたちのぼる汗とその匂いを嗅いで、いまの美由紀の状態を認知した。

(汗の匂いと脇の匂い・・・相当脱水状態・・・それとおしっこの匂い・・・このまま試合が終わればオッケーだす・・・)

もちろん、尿の匂いはどちらのかは分からない。

熱気でトランクスも乾いて、下着を嗅いでいる状態と変わらない。

にちゃにちゃにちゃ・・・

二人がうごめくたびに卑猥な音をたてる。

(体力は回復しただす!ある程度・・・これでフィニッシュブローを・・・)

美佐子が離れる。

 

 

「美由紀!左でパンチ!」

突然小百合が叫んだ。

言われるがままに、半分意識のない美由紀は左でパンチを打った。

(ガードできるヌルいパンチっすね!)

美佐子は右腕でガード。

 

ズキズキズキ!

 

ガードした瞬間に、また鋭利な痛みがわき腹を襲った。

感覚が正常に戻ってしまったらしい。

「うがぁぁぁっ!」美佐子が痛みに声をあげる。

その瞬間、全てが無防備に・・・。

指示されなくても分かる。美由紀は今最高に出せる力を振り絞ってアッパーを打った。

ぐわしゃっ!!!!

 

「ぶっは!」

美佐子が血と唾液とマウスピースを全て吐き出した。そして体は宙に舞っている。

全てがスローモーションに。

 

ドスン!

 

受身もとらずに美佐子はあおむけにダウンして、泡をごぼごぼ吹いて気絶した。

眼に光はない。白眼をむいて完全に意識が飛んでいる。

レフリーは唖然としている。

びちょーん!

マウスピースの跳ねる音でレフリーも正気に戻った。

カウントが始まる。

 

だがもう待っても美佐子は起き上がらなかった。

ひたすら痙攣をおこして、泡を吐き続けた。

傍らには血まみれのマウスピース、そして美由紀との交じり合った尿、汗が体にまとわりついている。

テン!

ゴングが鳴り響き、美由紀は手を挙げられた。

「勝者!青空美由紀!」