《》
(これで勝ったら・・・いや・・・勝てる!)
信子は血だらけの口をゆすいだ。
べっ!
血を吐いたように真っ赤な水が口からバケツに吐き出される。
セコンドアウト
丹念に洗ってくれたのだろう。綺麗な純白なマウスピースが信子の口に入れられる。
(世界チャンピオン!)
信子はそれだけを一心に考えていた。
ガッ!ガッ!と骨まで響くパンチが信子に襲い掛かる。
半分トランス状態の信子にはそれが痛く無かった。
ドヴォ!
強烈なボディが信子を襲う。
ズル・・・・・ベチャッ・・・ベチャ・・・・。
信子は内臓を全部吐き出したような苦しみを感じたが、実際に落ちたのはマウスピースだった。
「お・・・え・・・」
信子が前に倒れこむ。
血まみれのマウスピースを見た。
(口を守る防具・・・なんでボディで吐き出しちゃうんだろ・・・)
五戦五敗。これが現実だった。
(夢でもいいからチャンピオンになりたかった・・・)
マウスピースを咥えて信子は立ち上がる。
ファイティングポーズをとって・・・相手が迫ってきて・・・。
顎の骨が割れるようなアッパー。
血と唾液とマウスピースが観客に降り注ぎ・・・。