《うるど》

「わぁっ!プリンもある!」

ななはデザートのプリンに手をかけた。

裏からプッチンと棒を折ると、ちゅるんとプリンが皿の上に出てきた。

「フツー、プリンの廃棄なんて出ねえがな・・・こりゃワザと廃棄にまぎれて・・・」廃棄の親子丼を食べながら貧乏神が言う。

ひとしきり食べ終わると、ななが貧乏神を散歩に誘う。

「ビンボーさん、ちょっとお散歩いこうよぉ!

「・・・お前変わってんな、俺貧乏神。分かる?」

「ビンボーさんでしょ!お散歩行こうよぉ」

「分かった、分かったから引っ張るな!」

ゴミ箱に食べきった分のプラスチックの皿を押し込んで、死神はてとてと、ななの方に歩いてきた。

「おてて繋ごうね」

「どうかしてるぜ」

言葉とは裏腹に、そうイヤでもないらしく、貧乏神の方が手を出す。

 

 

「げほぉ!」

その頃うるまは、はねのボディで悶絶していた。

「あ・・・あの」

うるまは出せる声で精一杯尋ねる。

「はねって・・・ボクササイズじゃないんですか!?いきなりスパーリングとか・・・」

 

「違うよ、はねちゃんといっしょのコースっていうからガチでボクシングだよ」

会長が即座に答える。

「や・・・痩せますか?」

「うん、めっちゃ痩せる」

その会長の声で

「ならいいです・・・がふ・・・」と言ってうるまは吐血して倒れこんだ。

 

 

「びんぼーちゃん」

ななと、貧乏神が手を繋いだまま歩いている。

「何だ?」

「びんぼーちゃんって好きな人いないの?」

「クククッ!」一瞬貧乏神は笑った。

「何で笑うの?」

てとてとてと。死神が歩く音だけがしばらくする。

「そんな質問してきた奴はいねえからよ、笑っちまった」

「私は知りたいな。いたの?」

貧乏神は空を見上げる。もう星空が広がっている時間だ。

「いたさ、江戸時代にさ・・・昔なんだかどうなんだか、俺は生きすぎたのか感覚がよく分からねぇ」