《わたしはわたし》

「みんなの前で泣いちゃった・・・どうしよう」

屋上で正気に戻った北野がうなだれている。

「いまのうちに恥かいちゃえ♪」

「恥かいちゃえって・・・はぁ・・・アサキさんは簡単に言うんですね・・・」

「さんをつけなくて良いよ、北野ちゃーん♪」

「あ・・・ごめんなさい・・・じゃあアサキちゃんにケイコちゃん」

北野が言うと、ケイコがキッと睨んできた。

「ひっ!」北野は萎縮したが

その後、フッとケイコは笑った。

「じゃあさ、北野ちゃん、教室の方へ向いて立とうか」

「え?なんで?」

「いいから!」

しぶしぶ北野は教室側へ移動した。

「でね、ここでボクシング大会で優勝するって宣言しちゃえ!」

「え・・・ええええ??」

「北野ちゃーん、実行できなくても盛り上げたモン勝ちよん♪」耳元でアサキが囁く。

そしてアサキは北野の尻をつねった。

「いいいいぃぃぃぃぃっ!」大声がが響き渡り、授業中の生徒たちが一斉に窓から顔を出した。

「ほーらもう後には引けないよ、私の言うとおり言ってみ!」

確かにかなりの数の生徒が窓から乗り出すように見ており、何でもありませんでは乗り切れない状況だった。

「いい?私、北野レイは」

「わ・・・わたし北野レイはーっ!!」

「ボクシング大会で」

「ボ・・・ボクシング大会で優勝します!」

「うほっ!そこまで言ってないって、すごいな!」アサキは楽しそうに笑う。

(言っちゃった・・・言っちゃった・・・どうしよう・・・)北野は恥ずかしくて目を瞑った。

パチ

パチパチ

パチパチパチ

パチパチパチパチパチパチ

完成と拍手が挙がった。

「え?」北野は目を疑った。

「がんばれよーっ!」「俺応援してたんだーっ!「北野ちゃんがんばってーっ!」

数々の声援が飛んでくる。

「ほーらね♪」アサキが笑顔で北野の方を見る。

「アサキさん・・・」

「やるじゃない」ケイコも笑顔だった。

「ほら、両手を挙げちゃえ!目立て!」アサキとケイコが北野の両手を高々と挙げる。

斉藤教師もフッと笑ってそれを見届けると、教室へ戻っていった。

 

「待った!黙れ!」大きな声がして、あたりはシーンとなった。

声の主は奥田だった。

「私に負けたらどうするのさ!あんたが口ばっかりだったらね!」

「えっ・・・」

「盛り上げるだけ盛り上げて、あっさり負けたらこの始末どうつけるのかって言ってるのよ!」

北野の頭に血がのぼった。もうアサキとケイコの力は必要無い。

「おっぱい出して撮影会でもやってやるわよ!」

 

 

おおおおおおおおおおおおぉぉぉ!

 

たくさんの男子生徒から歓声があがる。

 

(やってやる!やってやるっていったらやってやる!)北野は両手を握り締めて奥田を睨みつけた。

「くっ・・・食われたッ!」奥田はそのまま教室へ戻っていった。

 

「なあなあケイコ♪」

「ん?なにアサキ」

「人間って本気になったらすぐ変われるもんねぇ♪」

「フフ・・・そうね」

「ボクシング・・・教えてあげようかねぇ」

「アサキがやるなら別に手伝うけど?」

 

「フー!フー!」鼻息の荒い北野にアサキはそーっと寄っていって

「サンプル!」と叫んで北野のセーラー服をたくし上げた。

Bカップの微妙な胸が生徒たちの前にポロッと露出した。

 

おぉぉぉぉぉぉ!

男子生徒歓声と同時に、北野はアサキの顔面を殴っていた。

「ふごっ!・・・ナイスパンチ・・・」

そう言うとアサキは倒れた。

「えっ?」

「私たちボクシングやってるから、これナイショだけどね」ケイコがアサキを起こしながら言った。

「ぐっじょぶ!鍛えてあげよう!」アサキが鼻血を出して笑顔で親指を立てた。